筑後川の河口にある大川市は、木材の産地・日田から川を下ってくる材木の集積地として栄え、造船業が発達し、海上交通の要衝として重要な役割を果たしてきました。その中心地が大川家具発祥の地といわれる「榎津(えのきづ)」です。
この地名は、室町時代、戦で兄を亡くした榎津久米之介が乱世をはかなんで当地を訪れ、自分の氏である榎津と名付けたことに由来します。
その後、家臣の暮らしを支えるために船大工の技術を生かして指物を始めたのが大川家具の出発点です。
- 1536年|室町時代後期
家具の開祖、大室町幕府十二代将軍・足利義晴の家臣、榎津遠江守の弟として 生まれた榎津久米之介が、家臣に商工を営ませたことに始まると言われています。それが、天文5年(1536)船大工の技術を生かしての指物(さしもの)を始めたことです。
- 1812年|江戸時代後期
中興の祖、田ノ上嘉作は、文化9年(1812年)榎津長町に生まれ、家大工であった彼は長崎で修業をして箱物の技術を習得して帰郷し、ここに榎津箱物が生まれます。さらに孫である初太郎も嘉作の名を継いで長崎に出向き、唐細工の技法を取り入れて榎津指物の地位を不動のものにしました。
以後、田ノ上一門の名工たちは、時代に合った唐木細工やオランダ家具などの新しい技術を習得しながら、釘を使わず、木に穴や切り込みを入れ組み合わせた榎津指物を作りました。今日の大川家具の礎を築いたのです。以後、田ノ上一門の名工が時代にあった新しい技術を習得し、今日の大川家具の礎を築きます。
- 1877年|明治10年頃
明治時代初期になると、大川独特のデザインや機能を持った榎津箪笥が登場。当時、「木挽きによる製材」「金具製造」「塗装技術」「木工職」の4つ技術をもった職人が分担で作業を行い、1つの作品を完成させていました。この頃から、分業による技術の発展のため住人の4分の1が木工業に従事し、家具の産地として町が形成されていきます。
- 1889年|明治22年頃
今から約100年ほど前の明治22年(1889年)、町村合併によって大川町が誕生し、木工関係者が町全体の四分の一を占めるほどになりました。この発展の原因には、塗装方法や木工機械の進歩などの技術の発展のほかに、材料の木材が確保できたことと、家具製品の販売先が広がったことがあげられます。
- 1909年|明治42年
大川指物同業組合が結成される。
- 1911年|明治44年
同業組合立「大川工業講習所」が開設される。
- 1912年|大正元年
大川鉄道が敷設され、販路が拡大される。
大正初期の榎津地区の職業分布図。ほとんどの住民が木工業に従事している。現在も、大川では、親・兄弟・親戚筋をたどれば木工関係の仕事に就く人が必ずいるという。これも、インテリアシティと言われる所以だ。
- 1945年|昭和20年
第二次世界大戦の敗戦による物資不足が木工関係者に打撃を受ける。
- 1949年|昭和24年
戦火で家を失った人からの需要が高まり、木工産地として復活し、家具づくりを再開。この頃になると、「のこぎり・かんな・のみ」の手作業から「カッター・手押しかんな・自動かんな・角のみ」の機械作業へと移行。これまでの半分の工程での生産が可能になり、一大産業として成長しました。同年、国より「重要木工集団地」の指定を受ける。またこの年、榎津久米之介の400年忌を期して「第1回大川木工祭(昭和29年から「木工まつり」となる)が開催される。
- 1954年|昭和29年
新町村合併促進法によって大川町・三又村・木室村・田口村・川口村・大野島村が合併し、大川市が誕生。初代市長に龍野喜一郎氏が就任。
- 1955年|昭和30年
「第1回全国優良家具展」への出品により、全国の注目を集める。同年「西日本物産展」で工業デザイナー河内諒デザインの和ダンスが最高賞を受賞。世に知られる大川調の「引き手なしたんす」です。
- 1963年|昭和38年
家具メーカーで組織する「協同組合大川家具工業会」を発足。
- 1971年|昭和46年
展示会場を備えた「大川産業会館」が建設される。
- 1974年|昭和49年
戦後のベビーブームによる、急激な結婚や新築のラッシュにより日本一の家具産地となる。
- 1987年|昭和62年
イタリアの家具産地「ポルデノーネ市」と姉妹都市締結。
財団法人大川総合インテリア産業振興センター設立。
- 1990年|平成2年
「デザイン・イヤーin大川」の集大成イベント「国際デザイン・フォーラム」開催。
世界に羽ばたくインテリアシティとして大きな一歩を踏み出す。
- そして現在の大川は…
大川の異業種の職人やデザイナーとコラボレーションして誕生した「SAJICA(サジカ)」ブランド。これは、大川が誇る伝統技術を生かして、現代のライフスタイルに合った製品を生みだして行こうという取り組み。海外での展示会でも高い評価を受けています。
このほか、加齢により身体機能の変化に対応し、自立をサポートする福祉家具の開発など、人に、環境に優しい快適なインテリア空間の創造に取り組んでいます。